映画『イニシエーションラブ』の著者で話題の乾くるみの小説 『リピート』 ※ネタバレあり
今回はタイトルにもある通り、
あの話題作『イニシエーションラブ』の著者の作品、
『リピート』を紹介していきます!
映画化で話題! 純情ストーリーかと思いきや・・・ 乾くるみ 静岡が舞台 『イニシエーション・ラブ』 ※ネタバレあり - 『話題のあの本』
イニシエーションラブの小説のレビューも書いてありますので、
興味ある方はぜひ。
1. あらすじ
2.解説(ネタバレ)
の順で書いていきますが、読む前の方はくれぐれも
解説は読まないようにしてくださいね。
1. あらすじ
登場人物
毛利(主人公)=バーで働く頭のキレる大学4年生
風間=リピートの第一発見者でゲストを招き入れる主導者
天童=会社社長、過去に探偵っぽく事件を解決したこともある有能男、毛利と仲間。
池田=ゴルフのレッスンプロ、お人よしのいい人。毛利も信頼を置く。
高橋=トラック運転手、ギャンブル大好き。
横沢=会社員、中年男。
大森=化学系研究者
篠崎=女性。会社員、のちの毛利の恋人
郷原=おじいさん、会社社長
坪井=高校生、受験失敗を悔やんでいる。
由子=毛利の元恋人、
が主な登場人物です。少し多いですね。
この物語は、まず毛利に知らない男から電話がかかってくるところからスタートします。
「今から約1時間後の午後5時45分に地震が起きます」
毛利はもちろん「は?」という反応を示します。電話先の名前は風間。
そして話を聞いていくと、1度すでにこの地震を体験していて、
だから地震が予言できたのだとのこと。
そして実際1時間後に地震が発生。
どうしてだ?と考えていると、また風間から電話がかかってきて、
「これは私が1度過去に戻って同じ体験をしているからわかったことだ」
と説明する。
つまり、この物語の地震発生時点での季節は10月であるが、
例えば11月まで過ごして地震を体験した風間が、1度過去に戻って、
10月の毛利に電話をして、地震を予言したかのように見せた。
ということになります。
そして風間はこの過去に戻れる現象のことを風間は、
リピート
と呼んでいるそう。
このリピートに参加するメンバーを探していて、ランダムにかけた電話番号が、
毛利だった。そして毛利以外にもリピートに参加するメンバーは、
毛利のほかにも8人いるらしい。
そのメンバーというのが上で紹介した由子以外の人間です。
リピートを詳しく説明します。
リピートとは、10月現在から、
その年の1月戻ることができ、もう1度同じ体験をすることができるという現象。
だから、例えば競馬の結果を10月時点で記憶しておけば1月に戻って、その記憶から、競馬結果を言い当てて、ぼろ儲けすることも可能だし、受験であれば、答えを全部記憶して、全正解することが可能である。ということです。
しかしリピートする際にメモ等を持っていくことはできず、
頭で記憶するしかできません。
そしてリピートは10月になれば、また同じことを繰り返すことができ、
1回目のリピートをR1
2回目のリピートをR2
3回目のリピートをR3・・・・というふうに数えていきます。
そしてR1やR2、R3は「違う世界だ」と解釈することができるわけです。
こんな夢のようなリピートですが、デメリットも存在します。
オリジナルの0と、リピートという現象を知って、これから起こる未来を知っている人間では、1月~10月で取る行動は絶対変わってくるからです。
作中で「カオス理論」という理論がでてきますが、
これは簡単にいうと、少しの行動や結果の違いで、その後に起こる現象や結果は徐々に変化していく、というものです。
リピートをするとこれが起こるわけです。
ですから、リピートメンバーがいくら未来のことがわかっていても、
周りの人間関係や身の周りで起こる現象は徐々に変わっていってしまうわけです。
そんなデメリットがある中、リピートメンバーの周りでオリジナルの0と、
リピート後の世界で、どう変化し、どういった問題や事件が起こるのか。。。
リピート後の世界では、リピーターたちの不可解な死が連続して起きていきます。
その真相は。。。。。
というのがこの物語のあらすじです。
個人的には、イニシエーションラブとは違って
最初からハラハラがあり、違った面白さがあると思います。
感想としては、最初から最後まで登場人物が葛藤しながら、
様々なことを考えるように、
自分も物語のカラクリを一緒に考えさせられて、飽きず最後まで
読み続けられる小説で面白いなあと。
僕は違うことをしてるときも物語の展開を考えてました(笑)
興味ある方はぜひ読んでみてください。
2.解説
さてここからは解説です。
あらすじでも書きましたが、
カオス理論に基づいて、リピート前とリピート後の世界では、
起きる現象が違ってきます。それに基づいて説明していきます。
物語ラストのほうで、リピート第1発見者の池田と風間は、毛利にからくりを説明している場面があります。
そこが読者の皆さんの中で引っかかっているところではないでしょうか。
池田と風間はこう言います。
リピートメンバーはみんなR8に至るまでで、死ぬ運命にあった。そこで、私たちが、R9で助けた。
と。
つまり8回リピートしている風間と池田は、リピートに飽きて、
人助けをして、暇つぶしをしようとします。
そこでR9では、10月以前に死ぬはずだったメンバーを助けます。
助けたからこそ、メンバーにとってのオリジナルの世界でも生きていることができた。
しかしメンバーは、リピートをし、1月に戻ってしまう。
つまり、1月から考えたリピート後の未来で、また死んでしまうのです。
R10では池田と風間はメンバーを助けませんから。
リピート後のR10でメンバーが、恐怖にさらされる、「リピーター連続殺人」は
そこが答えですね。
リピーターを狙った殺人事件が連続で起きている、つまり、リピートのことを知っていて、それをよく思わない人がメンバー以外にいる。
という仮説をメンバーはたてますがこれは間違いで、
メンバーは元から死ぬ運命であったから、連続で死んでいった。
というのが正しい答えです。
そのため、もしリピーターたちが風間からの電話を最初に取らなければ、
メンバー全員10月以降のR9で生きることができていたわけです。
そのカラクリに気付いたのが毛利と天童で、R10での死ぬ運命を回避し、
結果的にR11に行くことができた・・・
というわけです。
まあ、終わり方も残酷でしたけどね・・・(笑)
といったように、なかなか頭を使う物語でしたが、
結末は、「まさか。。。」といった感じで、
さすが乾さん!って思いました。
それでは。