映画化で話題! 純情ストーリーかと思いきや・・・ 乾くるみ 静岡が舞台 『イニシエーション・ラブ』 ※ネタバレあり
今回は、松田翔太さんや前田敦子さんら豪華キャストが出演した映画として話題に
なった乾くるみさんの『イニシエーション・ラブ』の原作小説の
紹介をしていこうと思います。
ぜひ映画のほうもチェックしてみて下さい。
(この作品を映画化ってかなり難しいと思ったのですが・・・)
映画と小説では、内容が変わっているようなので、
映画しか見たことがない方は小説を、小説しか読んだことない方は、
映画を見てみることをお勧めします。
1 あらすじ
2 解説
※まだ読んでいないという方は必ず1のあらすじだけ読むようにしてください。
最後の最後ですべてひっくり返されるのがこの本の醍醐味なので。
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あらすじ
舞台は主人公の夕樹(たっくん)大学在学時の静岡(乾くるみさんが静岡出身ということもあって)と、就職後の東京。
本のなかでは、夕樹が静岡に住んでいる時をsideA、就職後をsideBと表現されている。
登場人物は、
夕樹(たっくん)
=静岡大学に通う大学生、繭子の彼氏。卒業後東京に就職。
繭子
=静岡で歯科衛生士をする女性。夕樹(たっくん)の彼女。
海藤
=夕樹の同僚、石丸に惚れている。
梵ちゃん
=夕樹と海藤の同僚。
石丸美弥子
=夕樹の同僚。慶応大学出身で優秀、美人でモテる。
重要な登場人物はこの5人。
繭子とたっくんはたっくんが大学4年生時に開催した合コンで出会う。
合コン後全員で何度か遊んだ後、意気投合し2人で遊ぶようになり、
結果付き合うことに。
毎日電話をし、週に1回必ず会う、クリスマスには高級ホテルとレストランで過ごす、
そんな幸せな生活をする。
お互いが恋人のことを第一に考えて生活する。
しかしたっくんが就職すると、東京本社への異動を命じられ、
遠距離恋愛をすることになってしまう。(ここからsideB)
それでもたっくんは、繭子に会うために土日は必ず静岡に行くようにしていた。
たっくんは毎週頑張って交通費と時間をかけながら、繭子に会いに行っていたが、
仕事の忙しさとマンネリで、繭子に会いに行くのが億劫になってしまう。
そんなときにあらわれたのが同僚の石丸である。
石丸はたっくんに惚れており、アプローチをかけるようになる。
結果たっくんの浮気という形でお互いは関係を持つようになる。
しかしそんな中、繭子と夕樹の間に子供ができたことが発覚。
話し合った結果おろすという決断。
そんな決断をし、お互いが葛藤している関係性であるのに、
あるときたっくんは繭子に会っている最中に
間違えて石丸の名前を呼んでしまう。結果繭子と破局。
繭子のことがまだ気になっていたたっくんは石丸に言われてしまう。
「繭子ちゃんとの関係はイニシエーションラブ、つまり
通過儀礼だったってこと。子供が大人になるための儀式」
たっくんも次第にこの言葉を信じるようになり石丸と
真剣にまっすぐに付き合うようになる。
そしてたっくんはある時石丸の家に招待される。
家族と食事を終え、2人きり部屋に行き、会話をしていると・・・
そこですべてが明かされる・・・・というのがこの話の結末です。
結末どうなるか、ぜひ読んでみてください。
絶対に2回読みたくなると思います。
文春文庫『イニシエーション・ラブ』乾 くるみ | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
※読んでいない方はここまで。ネタバレあり。
2 解説
最後に石丸は言いますね。
「・・・・何考えているの?辰也」
辰也?って思った方も、すぐにわかった方もいるかと思います。
そうなんです。sideBの、東京にいて繭子と遠距離恋愛をし、のちに別れて、
石丸と付き合っていたのは夕樹ではなかったんですね。
別の人物である辰也なんです。
(結末がわからないようにあらすじの登場人物では辰也の名前は書きませんでした)
鈴木夕樹(sideA)と鈴木辰也(sideB)がいるわけです。
そう、これは実は繭子の浮気の物語です(笑)
sideAとsideBでは時系列がずれています。
夕樹が大学在学時に、繭子と合コンで出会い、付き合ってたときにはすでに、
東京にいた辰也と繭子はすでに遠距離恋愛をしています。
疑問をそれぞれ解説します。
①
繭子が合コン時につけていた指輪は辰也にプレゼントされたもので、
夕樹が繭子に、
「あの指輪なんで最近つけてないの?」
と聞いたときには、もうすでに東京にいる辰也と別れており、
辰也はすでに石丸1人と付き合っています。
②
1回だけ夕樹との予定を
「便秘が辛すぎて、1日入院しちゃって、いけない」
これはつまり、辰也との間にできた子供をおろそうとしたときの入院なんです。
「お腹が張っちゃって」
これは子供がお腹の中にいたからですね。
夕樹とのデートでたばこを勧められたのに吸わなかったのも、
繭子のお腹に子供がいたからです。
③
sideBの最後のほうに辰也が酔っ払って、別れた繭子に電話してしまったとき、繭子は電話が来ることが当たり前だったかのように、
かかってくることがわかっていたかのように、
「たっくん・・?」
と返事しました。
つまりこれも、夕樹(たっくん)とラブラブで、毎日電話していたからなんです。
毎日電話をしていたから、夕樹だと思い、普通に出たんです。
④
辰也と初の海を行くはずだったのに行けなかったシーン。辰也が
繭子の日焼けに気付いたシーン
「なんで日焼けしてるの」
これは夕樹と繭子らが合コン後に海に行った後だったからです。
つまり辰也と繭子がギクシャクしていたときに繭子は合コンに参加し、
海に行ったわけです。
どうでしょうか、純情なラブストーリーだなーという感じで読み進めていると、
最後にすべてひっくり返されますよね(笑)
最後の2行目の
「・・・・なに考えてるの?辰也」
だけで、ドロドロな物語に変貌します。
辰也にとって繭子がイニシエーションラブであったように、
繭子にとっても辰也がイニシエーションラブであったんですね。
辰也は繭子と別れ石丸と付き合い、
繭子は辰也と別れ夕樹と付き合ったのです。
これを最後まで気づかれないように、乾くるみさんは、
1人称を「僕」であったり、「たっくん」であったり、
うまく変化させながら、描いているんです。
天才です(笑)
この解説を見たあとで、ぜひ再読してみて下さい。